コロナウイルスN501Y変異
コロナウイルスPCRの結果を報告するときに、「N501Y変異が認められました」と伝えると「それどういう意味ですか?」と聞かれることがあります。N501Y変異って、あまりなじみのない言葉ですよね。
N501Y変異ってなに?N501Y変異って感染力が強いの?ワクチンはきかないの?といった疑問について解説します。
- 目次
- コロナウイルスはどのようにヒトの体に入っていくか
- コロナウイルスN501Y変異の特徴
- コロナウイルスN501Y変異の感染力
- コロナウイルスN501Y変異にワクチンは有効
- N501YとE484K変異の違い
コロナウイルスはその表面にトゲトゲした突起物を持っています。これをスパイクタンパクといいます。スパイクって先の鋭いものってイメージです。このスパイクを持っていることがコロナウイルスの特徴の一つです。スパイクタンパクがヒトの細胞の表面にあるACE2受容体というところにくっつくことで感染が成立します。ここを封じれば感染を阻止できるのです!
ACE2受容体のない細胞にはコロナウイルスは侵入できませんが、実はヒトの細胞にはACE2受容体を持つものがとても多く、咽頭や舌、肺、腎臓、心臓、膵臓、脂肪細胞などに広く分布しています。
今、問題になっているN501Y変異ウイルスは、スパイクタンパクの形に変化が起きた結果、ACE2受容体にくっつきやすくなり感染しやすくなりました。
また、一度コロナウイルスに感染したことがあるヒトやコロナワクチンを打ったヒトであればこのスパイクタンパクに対して抗体(中和抗体)を持っていて、このスパイクタンパクにくっつくことで感染しにくくなります。
しかし、このスパイクタンパクに変異が起きることで、抗体がくっつきにくくなるパターンの変異あります(E484K変異)。 N501Y変異はスパイクタンパクの形が変化してACE2受容体にくっつきやすくなった結果、感染力が強くなったコロナウイルスです。詳しくいうと、ウイルスのタンパク質の501番目のアミノ酸がN(アスパラギン)からY(チロシン)に変わり、スパイクタンパク質が人の細胞と結合しやすくなりました。 感染力が強くなり、子どもにかかりやすくなったといわれていますが、正しくは子ども〜大人までかかりやすくなりました。今でも子ども特にかかりやすくなったという事実はありません。 基本的な症状は同じです。かぜ症状から始まり、味覚障害や嗅覚障害を認めることもあるし、肺炎を起こせば咳や呼吸困難が悪くなります。
対策についても従来通りです。人と人との接触を減らし、マスク着用、手洗いを徹底することが大切です。
現在のところ、N501Y変異コロナウイルスではワクチン効果の低下は明らかではないようです。
E484K変異もテレビなどで耳にすることがあるんじゃないでしょうか?E484K変異もN501Y変異と同じようにコロナウイルスのスパイクタンパクの形が変化したウイルスです。スパイクたんぱく質のアミノ酸のうち、484番目のアミノ酸が変化しました。
E484Kの変異のためスパイクタンパクに抗体がくっつきにくくなるため再感染しやすくなる可能性やワクチンが効きにくくなる可能性があるといわれてます(免疫逃避と呼ばれています)。
コロナウイルスN501Y変異の特徴
- コロナウイルスの変異とはコロナウイルス表面にあるスパイクタンパクの形が変わってしまったコロナウイルスです。
- N501Y変異のコロナウイルスはスパイクタンパクの形の変化のためヒトの細胞表面にあるACE2受容体に強くくっつくようになったため感染力が強くなりました。E484K系変異では抗体がくっつきにくくなったため再感染しやすくなったり、ワクチンが効きにくくなる可能性があります。
N501Y変異についてまとめました。N501Y変異ついて知識が深まると幸いです。