ノロウイルス感染症にかからないように細心の注意をする
みなさんにもなじみのあるノロウイルスのお話です。外来でも診断されるケースが出てきております。腸炎はとても辛いですよね。数年前に私の一家にも感染性腸炎のクラスターが起きて、一家全員で嘔吐、下痢を繰り返したことがありました。仕事は休まざるを得ないし、子どもの脱水は心配になりますし、大変ですよね。
本記事の内容
✔ノロウイルスはどんなウイルスか
✔ノロウイルスが流行する理由
✔ノロウイルスは劣悪な環境でも生きていきます
✔驚異の不顕性感染!
✔ノロウイルスが広がる経路を知ると予防もできる(かも)
✔ノロウイルスの検査方法
✔ノロウイルスの治療方法
ノロウイルスは例年11月頃から増加しはじめ、12~3月がピークとなります。寒い冬に流行る感じです。
小さなお子さんからから成人、高齢者までの幅広い年齢層に、おう吐・下痢などの胃腸炎症状を起こすウイルスです。潜伏期間は、通常1~2日以内です。
カキなどの二枚貝を介した食中毒の原因となったり、保育園や幼稚園、学校や病院、老人保健施設などに集団発生する可能性があり、社会的インパクトが大きい疾患です。
ノロウイルスは以下のような理由で広がりやすいと考えられてます。
①排泄物中のウイルス量が非常に多い。
②感染力が極めて強い
少量のウイルスで感染してしまいます。身に覚えない人がいても不思議ではありません。
③糞便中にウイルスが排泄される期間が長い。
長い場合には4週間以上、糞便中に排泄されます。回復しても長い間感染予防に努める必要があります。
④アルコール消毒が効きにくい。
アルコールだけではなかなか消毒しきれません。
ノロウイルスは劣悪な環境でも生き残り、皆さんに感染するチャンスを狙っています。
口から入った細菌やウイルスは、たいていは胃酸で死滅しますが、ノロウイルスは酸に強いので、胃を通過してしまいます。
アルコール消毒でウイルス量は減らすことはできますが、消毒しきれません。少量でも感染してしまうため、安心はできません。トイレ周りや患者が触れたもの(ノブや蛇口、食器類など)を次亜塩素酸ナトリウム(0.02%)で消毒しましょう。
60℃、30分間で感染性があります。加熱消毒するなら85℃以上で、1分以上が必要です。
低いほど安定、凍結しても死滅しません。
室温で20日以上たっても感染性があります。
ノロウイルスにかかれば、程度の差こそあれ、下痢や嘔吐などの消化器症状が出ると思っていませんか?でも、それはなんと間違いです。
実は2~3人に1人は、ノロウイルスに感染しても症状でないと言われております。
ノロウイルスに感染し、体内でノロウイルスが増殖していても、症状が全くでないことを不顕性感染と呼びます。不顕性感染の人であっても他の人にノロウイルスをうつす可能性はあるのです。
もし、調理をしているヒトがノロウイルスにかかって、症状があれば仕事を休むという手段を使えますが、不顕性感染者で、症状がないのにノロウイルスを広めているということもありうるのです。これはちょっと怖い話です。
汚染された二枚貝の生食あるいは不十分な加熱のものを食べた場合や汚染された調理器具や手指を介して、二次的に汚染された食品を食べた場合です。
患者の便や吐物の処理した後に手洗いや手指消毒が不十分で、汚染された手指を介して感染する場合や汚染された箇所(ドアノブやテーブルなど)に触れることで、手指が汚染されてしまう場合、患者のふん便や吐物の乾燥により、ウイルスが空気中に漂い、それを吸い込んで感染する場合などがあります。
症状や周囲の感染状況等から考えてノロウイルスを原因と推定して診療が行われています。
ノロウイルスの診断のために「ノロウイルス抗原検査」が実施可能です。ふん便中のノロウイルスを検査キットで検出するもので、3歳未満、65歳以上の方に健康保険が適用されます。
現在、ノロウイルスに効果のあるワクチンも抗ウイルス剤はありませんので、対症療法が行われます。特に、体力の弱い乳幼児、高齢者は、脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないように、水分と栄養の補給を充分に行いましょう。脱水症状がひどい場合には点滴などの治療が必要です。