子どもの病気

入園前・入学前にアレルギーセットは必要ですか?

子どもが元気に育つことは、親にとって一番の願いですよね。学校や保育園に入る前に、子どもがアレルギーを持っていないか心配する親御さんも多いです。保育園でアレルギー検査を受けるように言われた、離乳食を始める前に受けておきたいといった理由で受診される方がいらっしゃいます。
でも、そのためにすぐにアレルギー検査を受けさせる必要があるのか、ちょっと考えてみましょう。

アレルギー検査とは?

アレルギー検査にはさまざまな種類がありますが、ここで話題にするのはMAST36やView39といった、一度に多くのアレルゲン(アレルギー反応を引き起こす物質)に対する反応を調べるセット検査です。

これらは血液検査を通じて、特定のIgE抗体が存在するかを調べるものです。IgE抗体とは、アレルギー反応を起こすときに体内で増加する抗体の一種です。

検査を受けるべきか、受けないべきか

親としては、子どもが持っているかもしれないアレルギーについて事前に知っておきたいと思うのは理解できます。しかし、このようなセット検査にはいくつかの問題点があります。

偽陽性の問題

セット検査を行うと、様々な食品で陽性になることがあります。実際には問題なく食べられる食品に対してもIgE抗体が反応し、アレルギーがあるかのように見せかけることがあります。

これは「偽陽性」と呼ばれ、採血結果のみを根拠とした不適切な除去をを引き起こす原因となります。

今まで食べて問題がなかったのであれば、そのまま続けて問題ありません。

感度と特異度の低下

MAST36やView39のようなセット検査は、単一のアレルゲンに対するIgE抗体を調べる場合に比べて、感度(アレルギーを持つ人を正しく見つけ出す能力)と特異度(アレルギーがない人を正しく除外する能力)が低くなりがちです。

セット検査では、個々のアレルゲンに対する精密な分析が難しいのです。

セット検査といっても万能ではない

また、View39で全部陰性でも、本当にアレルギーがないとは限りません。実は、この検査では調べられないアレルゲンもあるんです。

例えば、クルミやカシューナッツなどのアレルギーが現在は増えていますが、View39では検査できていません。

そうなんです。View39も全ての項目を網羅しているわけではないということです。

また、View39ではオボムコイド以外のアレルゲンコンポーネントの測定ができません。アレルゲンコンポーネントとは食物アレルギーの診断精度を上げてくれる検査でアレルギーの診断には大切な検査ではありますが、セット検査でも想定できていないんです。

以上のような理由で、当院では原則として、セット検査は実施していないのです。

どうすれば良いのか?

アレルギー疾患が疑われる場合、検査を急ぐのではなく、以下のステップを検討すべきです。

まずは観察

まず、子どもが特定の食物を食べた後にどのような反応を示すかを観察します。アレルギー反応が疑われる場合は、医師と相談してください。

食物負荷試験

確定診断が必要な場合は、食物負荷試験を検討します。これは、アレルギー専門の医療機関で行われ、アレルギー反応を起こす可能性のある食品を少しずつ摂取していき、体の反応を見るテストです。

この検査は当クリニックではできませんのでアレルギー専門の病院に紹介しております。

結論

アレルギーに対する不安は親なら誰もが感じるものです。しかし、セット検査のような手段に頼る前に、より確実で安全な方法を考えることが重要です。

子どもの健康は何よりも大切ですが、不必要な検査や食事制限から子どもを守ることも同様に大切です。

ぼくにも子どもが三人いますが、アレルギー検査をしてませんよ。

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