📅 2026年5月2日 (0日前に公開)
子宮頸がんは、毎年国内で約1万人が診断され、約3,000人が亡くなっています。しかし、このがんはワクチンで予防できる、数少ないがんのひとつです。
当院には「うちの子はまだ小学生だから先の話」「副反応が心配で迷っている」「キャッチアップはもう終わったの?」など、HPVワクチンに関するさまざまなご相談が寄せられます。この記事は、そうした疑問にまとめてお答えするために書きました。
大切な情報から先にお伝えします。キャッチアップ接種(公費による追加接種)は2026年3月31日に完全終了しました。対象だった世代の方は、以降は自費での接種となります。詳しくはセクション4をご確認ください。
それ以外の方(小6〜高1女子)の定期接種は引き続き公費で受けられます。ワクチンの種類・スケジュール・副反応・当院での予約方法まで、順番に説明していきます。
- 小6〜高1の娘がいる保護者の方 → セクション3(定期接種)へ
- キャッチアップ世代(1997〜2009年生まれ)の方 → セクション4(終了のお知らせ)へ
- 男性・息子さんへの接種を考えている方 → セクション5(男性の接種)へ
- 副反応が不安で迷っている方 → セクション7(副反応・安全性)へ
目次
1. HPVとは? ── 子宮頸がんとの関係
HPV(ヒトパピローマウイルス)は、皮膚や粘膜に感染するウイルスで、100種類以上のタイプが知られています。性的接触のある女性の50%以上が、一生のうちに一度は感染するといわれており、それほど身近なウイルスです。
多くの場合、感染しても免疫の働きで自然に排除されますが、一部のタイプ(特に16型・18型)は粘膜に長期間とどまり、長い年月をかけて子宮頸がんを引き起こすことがあります。子宮頸がんの原因の90%以上は、HPV感染によるものと考えられています。
子宮頸がんは20〜30代の若い世代に多く発症するのが特徴で、30代までに年間約1,000人の女性が、治療で子宮を失い妊娠ができなくなっています(札幌市保健所)。命にかかわるだけでなく、将来の妊娠・出産の可能性にも影響する病気です。
📊 子宮頸がん、知っておきたい数字
| 毎年 | 約1万人 | が新たに診断される |
| 毎年 | 約3,000人 | が亡くなっている |
| 30代までに年間 | 約1,000人 | が治療で子宮を失う |
| 原因の | 90%以上 | がHPV感染によるもの |
一方で、HPVワクチンにより感染を予防することができます。「がんを予防できるワクチン」は世界でも非常に珍しく、このワクチンの意義はその点にあります。
また、ワクチンを接種した後も、子宮頸がん検診(20歳から)を定期的に受けることが大切です。ワクチンですべてのHPVタイプを防げるわけではないからです。ワクチンと検診の「二本立て」が、子宮頸がん予防の基本と考えられています。
2. HPVワクチンの種類
日本で接種できるHPVワクチンは3種類ありますが、2026年4月以降、定期接種(公費)の対象は9価ワクチン(シルガード9)のみとなりました。
| 名称 | 価数 | 対象HPVタイプ | 子宮頸がん予防カバー率 | 2026年度の定期接種 |
|---|---|---|---|---|
| サーバリックス | 2価 | 16型・18型 | 約60〜70% | 対象外(自費) |
| ガーダシル | 4価 | 6型・11型・16型・18型 | 約60〜70%+尖圭コンジローマ予防 | 対象外(自費) |
| シルガード9 | 9価 | 6型・11型・16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型 | 約80〜90% | 公費(無料) |
9価ワクチン(シルガード9)は、2価・4価に比べてより多くのHPVタイプをカバーします。研究では、子宮頸がんの原因となる主要なHPVタイプの80〜90%を防ぐ効果があると考えられています。
2価・4価ワクチンを途中まで接種していた方は、9価への切り替え(交互接種)が可能です。切り替えを希望される場合は、当院にご相談ください。
接種回数について
シルガード9の接種回数は、最初の1回目をいつ受けるかによって異なります。
- 15歳未満で1回目を接種した場合:2回接種(標準:6か月間隔)
- 15歳以上で1回目を接種した場合:3回接種(標準:0・2・6か月)
接種回数の観点からも、できるだけ早い時期(中学1年生ごろ)に始めることが推奨されています。
3. 定期接種の対象者と推奨時期
HPVワクチンの定期接種(公費・無料)は、現在も続いています。
対象者
小学6年生〜高校1年生相当の女性(接種日時点で札幌市に住民票がある方)
2026年度(令和8年度)の対象生年月日
2010年4月2日〜2015年4月1日生まれの女性
標準的な接種時期:中学1年生(13歳)ごろ
接種は小6〜高1のいつでも受けられますが、最も効果が高いとされているのは性活動が始まる前、とりわけ中学1年生(12〜13歳)ごろです。この時期に接種すると、国内外の研究で子宮頸がんの発症リスクを大幅に下げる効果が確認されています。初回性交渉前の接種では約94%の予防効果があるとされています。
また、15歳未満で接種を開始すると2回接種で済むため、体への負担や通院回数の面でも早めの接種に利点があります。
接種期限に注意
無料で接種できるのは高校1年生相当の年度末(3月31日)までです。それを過ぎると有料(自費)になります。9価ワクチンを3回接種する場合は最短でも4か月かかるため、高校1年生の秋〜冬になってから動き出すと年度内の完了が難しくなることもあります。早めのスケジュール確認をおすすめします。
| 今の学年 | おすすめの動き | 接種回数 |
|---|---|---|
| 小学6年生・中学1年生 | 余裕あり。今すぐ予約が理想 | 2回(15歳未満) |
| 中学2年生・中学3年生 | 早めに予約を。余裕は十分あり | 2〜3回 |
| 高校1年生(前半) | 急いで予約を。3回の場合は時間が必要 | 3回(最短4か月) |
| 高校1年生(秋以降) | ⚠️ 年度内完了が難しい場合あり。まず相談を | 要確認 |
※ 高校1年生の年度末(3月31日)を過ぎると自費になります。
4. ⚠️ キャッチアップ接種は終了しました(2026年3月31日)
HPVワクチンのキャッチアップ接種(公費による無料接種)は、2026年3月31日をもって完全に終了しました。
1997年4月2日〜2009年4月1日生まれの方で、まだ接種が完了していない場合、2026年4月以降は自費(保険適用外)での接種となります。
キャッチアップ接種とは何だったのか
2013年から2022年まで、HPVワクチンは副反応への懸念から国の積極的な勧奨が一時停止されていました。その間に定期接種の機会を逃した世代を対象に、2022年4月から3年間、公費で接種できる「キャッチアップ接種」が設けられていました。
その後、2025年3月31日で1回目接種の公費期間が終了。2回目・3回目は2026年3月31日まで公費接種が可能でしたが、この経過措置も終了しました(厚生労働省・札幌市ともに確認済み)。
該当する世代の方へ:自費接種という選択肢
1997年4月2日〜2009年4月1日生まれで接種が完了していない場合でも、自費での接種は可能です。
費用目安(シルガード9の場合):1回あたり約3万円前後 × 接種回数分
15歳以上で開始すると3回接種が必要なため、合計で約9万円程度になります。決して安くはありませんが、子宮頸がんの治療や、がんが与える生活への影響と天秤にかけて考えていただければと思います。
「公費がなくなったから接種しない」という判断も、もちろんご本人の選択です。当院では、費用や効果について丁寧にご説明した上で、一緒に判断できればと考えています。
なお、性交経験がない方ほど接種の効果が高く、性交経験がある方でも一定の効果があることが研究で示されています。年齢が上がるほど効果が下がることも事実ですが、対象世代(現在17〜28歳ごろ)の方はまだ効果が期待できる年代です。
なお、シルガード9は添付文書上45歳まで接種可能(任意接種)とされています。
キャッチアップが終了してからも、「打ちたかったけど間に合わなかった」「公費がなくなったから迷っている」というご相談が続いています。費用のことは正直に話しますし、打つかどうかも一緒に考えます。「相談だけ」でも大歓迎です。まず一度、外来に来てみてください。
5. 男性もHPVワクチンが必要?
「HPVワクチンは女性のもの」というイメージは、少しずつ変わりつつあります。HPVは男性にも感染し、中咽頭がん・陰茎がん・肛門がん、さらに性感染症である尖圭コンジローマの原因にもなります。男性がワクチンを接種することは、自分自身を守ることと同時に、パートナーへの感染を防ぐことにも繋がります。
日本では現在、男性への定期接種(公費)はありませんが、任意接種(自費)で接種可能です。当院でも男性の接種に対応しています(ガーダシル4価:1回15,000円×3回)。
費用・年齢・接種スケジュール・なぜ男性にも必要かについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 男性HPVワクチン完全ガイド:接種すべき理由・費用・年齢・札幌での接種
6. お子さん本人へ:このワクチンのこと、知っておいてほしい
小学校高学年や中学生のお子さんが「なんで打つの?」と思うのは当然のことです。保護者の方が「説明してあげたい」と思っても、なかなか言葉が見つからないこともあるかもしれません。
当院では、子どもたちにもわかりやすいように、DNAとHPVの関係を解説した記事を書いています。ワクチンを打つ前に、お子さんと一緒に読んでみてください。
→ 『体の中の小さな秘密、DNAとHPVについて知ろう!』
7. 副反応・安全性について
HPVワクチンに関してもっとも多いご質問のひとつが「副反応は大丈夫ですか?」です。
2013年に国が積極的勧奨を一時停止したことで、「危険なワクチン」というイメージが広まりました。しかしその後の大規模な調査・研究により、接種との直接的な因果関係は確認されず、2022年に積極的勧奨が再開されました。
よくある副反応としては、接種部位の痛みや腫れ、頭痛、発熱などが知られており、多くは一時的なものです。また、注射の痛みや緊張による「血管迷走神経反射(立ちくらみ・失神)」が起こることがあるため、接種後15〜30分はクリニックで様子をみていただきます。
稀に重篤な副反応の報告もありますが(アナフィラキシーは約96万接種に1回など)、現在のところ、接種による子宮頸がん予防のメリットが副反応リスクを大きく上回ると評価されています(WHO・厚生労働省)。
副反応に関する詳しい情報はこちらをご覧ください。
→ HPVワクチンと安全性
8. 当院でのHPVワクチン接種について
接種できるワクチン
当院では9価ワクチン(シルガード9)を接種しています。定期接種対象の方(小6〜高1女子)は無料です。対象外の方(男性・年齢超過の方など)は自費となります。
費用のめやす(自費の場合)
シルガード9(9価):1回あたり約3万円前後(接種回数は開始年齢により2〜3回)
ガーダシル(4価・男性向け):1回15,000円 × 3回
※最新の費用は予約時にご確認ください。
接種の流れ
まず当院のWeb予約システムからご予約ください。初回の接種時に問診・診察を行い、今後のスケジュールもご案内します。2回目・3回目も同様に予約の上ご来院ください。
こんな方はご相談ください
- 定期接種の時期を逃してしまったが、自費でも接種を考えている
- 2価・4価ワクチンを途中まで打っていて、9価への切り替えを検討している
- 男性本人・または息子さんへの接種を考えている
- 接種スケジュールについて相談したい
ワクチンに関する疑問や不安は、診察の中でご遠慮なくお話しください。「打つかどうか決めていないけれど話だけ聞きたい」という方も、もちろん歓迎します。
※定期接種(小6〜高1女子)は無料です。自費接種のご相談もお気軽に。
9. よくある質問(FAQ)
Q. 高校1年生の娘がまだ一度も打っていません。今から間に合いますか?
A. 高校1年生相当の方は年度末(3月31日)まで公費で接種できます。ただし、9価ワクチンを3回接種する場合は最短でも4か月かかります。年度末ギリギリでは完了が難しくなる場合もあるため、できるだけ早めにご予約ください。
Q. 以前2価ワクチン(サーバリックス)を1回打っています。9価に切り替えられますか?
A. はい、切り替え(交互接種)が可能です。2026年4月から2価・4価は定期接種対象外となりましたが、途中まで接種した方は9価ワクチンで残りの回数を接種できます。スケジュールは接種したワクチンの種類や回数によって変わりますので、受診の際にご確認ください。
Q. キャッチアップ世代です。公費が終わった今でも打つ意味はありますか?
A. 接種歴がない方・未完了の方は、費用負担が生じますが、一定の効果が期待できます。特に性経験がない、または少ない方は効果がより高いと考えられています。費用と効果のバランスについてはご本人の判断になりますが、希望される方は当院でご相談ください。
Q. ワクチンを打ったら子宮頸がん検診は受けなくていいですか?
A. いいえ、検診は引き続き必要です。9価ワクチンはすべてのHPVタイプを防ぐわけではなく、すでに感染しているHPVへの効果もありません。ワクチン接種後も、20歳になったら2年に1度の子宮頸がん検診を受けることをおすすめします。
Q. 副反応が怖くて迷っています。
A. その気持ちはよくわかります。接種部位の痛みや一時的な発熱は比較的よくある副反応です。まれに重篤な副反応の報告もありますが、現時点でワクチン接種のメリットがリスクを上回ると評価されています。副反応への懸念は、当院の診察でも遠慮なくお話しください。詳しくは安全性の記事もご覧ください。
Q. 男の子には接種できますか?
A. はい、当院では男性への任意接種(自費)も行っています。詳しくは男性HPVワクチンの記事をご覧ください。
Q. 子宮頸がん検診を毎年受けているから、ワクチンは不要ですか?
A. 検診は「かかってしまったがんを早期発見する」もの、ワクチンは「そもそも感染を防ぐ」ものです。役割が違うので、どちらか一方では不十分です。ワクチン+検診の「二本立て」が最も効果的な予防になります。
Q. 子どもにHPVの説明をするのが難しくて…
A. よくあるご相談です。「なんで打つの?」という疑問に答えるための記事を書いています(→セクション6)。難しい言葉を使わずに説明していますので、ぜひお子さんと一緒に読んでみてください。
子宮頸がんは予防できる病気です。ワクチンと検診の二本立てで、しっかり守ることができます。「いつか打とう」と思い続けているうちに定期接種の期間が終わってしまうケースも少なくありません。迷っている方は、ぜひ一度当院にご相談ください。一緒に考えます。
小林俊幸(南22条おとなとこどものクリニック 院長)


